ユカリ(太田ゆかり):現役ダンサーでヨガ指導20年。「アーサナに繋がる」ピラティスとは何か
©大洞博靖
One World, Many Asanas vol.10
「One World, Many Asanas」は、世界中の人々がどのようにヨガを実生活に取り入れて実践しているのか探求し、共有することを目的とするプロジェクトです。
今回インタビューしたのは、アンダーザライト ヨガスクールでマットピラティスを指導するユカリ(太田ゆかり)。コンテンポラリーダンスを学ぶために1993年から3年半をパリで過ごし、帰国後はダンサーとして舞台に立ち続けました。当時は、怪我が治りきらないうちに舞台に出て、また別の怪我をする。そんなループの中にいたといいます。変化の入口になったのは、アメリカのダンスフェスティバルで、ダンスクラスの前にコンディショニングとして受けたヨガクラスだったといいます。ヨガとピラティスの両方を長く学び続けてきた人が、「アーサナに繋がる」という言葉に何を込めたのかをたどります。ヨガを長く続けている方にも、ピラティスが初めての方にも読んでいただける内容です。
#1 バレエからジャズダンス、そして「コンテンポラリーダンス」へ
UTL 幼少から舞踊を続けてこられて、コンテンポラリーダンスを学ぶためにフランスへ渡られたと伺っています。その頃のことを教えてください。
ユカリ 幼少のときはクラシックバレエをやっていましたが、途中で辞めて、また中学生ぐらいからジャズダンスとか、バレエのクラスもちょっとやったりしていて。十代後半はジャズダンスをやっていました。
そこで、まだその時は日本に「コンテンポラリー」という言葉が入ってきていなくて、モダンダンスとかがあったんですね。いまはジャズダンスの分野でもモダンダンスの分野でも「私はコンテンポラリーだ」という方も多くいらっしゃいますが、その頃はこの言葉自体がなくて。
UTL 当時はまだ名前がなかったんですね。
ユカリ そうなんです。「コンテンポラリーダンス」という名前だけではなく、考え方や実際の踊り方も当時は日本にはありませんでした。その後に以前から日本にあったダンスもコンテンポラリーと言われているものもありますが、この辺りを語ると長くなるので省きますが、、、当時の私には全く新しいものと捉えていました。
時々、ヨーロッパやアメリカからダンス公演が来ていて、その時に「コンテンポラリー」と言っていたか「ヌーベルダンス」と言っていたか。フランスでは1980年代「ヌーベルダンス」と言っていたんですね。新しいダンスということですけれど。それが始まりで、1990年代に入り、それがいまのコンテンポラリーダンスという名前で定着していったという感じなんですけれども。
その公演を見て刺激を受けて、1992年夏に、フランスのアヴィニョン演劇フェスティバルに、単身で行ってみたんです。そこで本場に触れて、もうこれはここで本場のコンテンポラリーダンスを学ぶ他ないと思って。帰ってきて、一生懸命働いてお金を貯めて、93年から留学することを決めて、フランスに行きました。
#2 パリの3年半——「余分な力を抜く」ということ
UTL プロフィールでは1993年から96年までとなっていますね。具体的にはフランスのどちらに。
ユカリ パリです。96年の終わりですね。実際にはパリに3年半滞在していました。
本当は好きなカンパニーがベルギーにあったりしたので、パリだったらベルギーにすぐ行けるからと思って。ベルギー自体は当時オープンなダンス留学のようなものがなかったので、フランスで留学の手続きを取ってベルギーに行ったり、ヨーロッパ各地、フランスの各地にワークショップを受けに行ったり。そんな感じでいました。
UTL フランス時代の経験で、身体との向き合い方や活動を含めて、帰国前と帰国後で何か変わりましたか。
ユカリ やっぱりフランスで受けた刺激というか、フランスだけじゃないですね、ヨーロッパで学んだり自分に影響があったのは、動いていくときに身体の緊張をとるというか、余分な力を抜くみたいな、抜きの感覚ですかね。なんかそれをかなり向こうで学ばせてもらいましたね。いろんな先生からとか。またヨーロッパでの芸術文化、沢山のダンスの舞台作品や音楽コンサート、アートに触れ、そこで得た感覚を今でも大切に持っていて、それをダンス創作に活かしていますし、日本に帰国してからもダンスだけではなく音楽コンサートや美術展にも行くようになりました。あとは、生活を楽しむとか。そういう部分でもたくさん刺激を受け、食べる事や料理なども生活を楽しむ様になりました。
UTL 当時、ヨガはされていなかったのですか。
ユカリ その頃はまだ、いまはフランスもヨガブームがあったところから落ち着いている感じですけど、私がいた頃の90年代はあんまりヨガという感じではなかったんですね。なので、残念ながら向こうでヨガの練習をしていたわけではないんですけれども。もう日々ダンスでしたね。ダンスを学びながら生活も楽しむ。
そしてパフォーマンス、舞台が身近だったので、やはりそれがすごく日本と違って。小さい劇場から大きい劇場までたくさんありますし、チケット代もすごく、まあ私は学生だったから余計にめちゃめちゃ安くて、大きい劇場でもすごい破格の値段で2列目で見たりとか。それがダンスにとどまらず、音楽とのコラボレーションとか、そういうものもあって。いろんなジャンルの芸術に触れられたという。
©大洞博靖
#3 怪我のループの中で出会ったヨガ
UTL ヨガとピラティスに出会われた経緯を教えてください。
ユカリ まずピラティスに関しては、パリで留学していたときに習っていたクラシックバレエの先生が、クラスに取り入れたりしていたので。「これ何だろう」と思って、よくよく考えたらピラティスをやっていた。クラスの中でそういう先生はあまりいらっしゃらなかったんですが、その先生はアメリカのニューヨークから来られた先生で、積極的にピラティスを取り入れてらした。
ヨガは、その時にはまだ触れていないんですが、帰国してからですね。96年の終わり、97年に帰国した後に、私が留学していた頃、同じ時代にロンドン留学していた人がいて。その人はダンサーで留学していましたが、その後振付家となり、その人から「ちょっと舞台に出てもらえないか」みたいな誘いをいただいて、カンパニーに関わることになって、結局カンパニー立ち上げのメンバーになったんですけど。そのディレクターの方と活動の一環で、アメリカのベイツダンスフェスティバルという、サマーフェスティバルなんですけれども、そこに行くことになって。
UTL ベイツダンスフェスティバル。
ユカリ ヨーロッパやアメリカって結構大きいダンスフェスティバルがサマーフェスティバルでいくつかあって、そのうちのアメリカのベイツダンスフェスティバルも、アメリカのダンス界ではすごく有名なんですね。一日中ワークショップをやったり、夜にパフォーマンスをやったりというのがあって。
その中で、ヨガクラスをダンスクラスの前に、コンディショニング、メンテナンスという形で受けたのがきっかけです。すごく質の高いクラスがたくさんラインアップされていて、ダンスもいいワークショップがいっぱいあって。ヨガはその頃はあくまでもメンテナンスだったので、先生の名前さえ覚えていないんですけれども。でも、すごくいいクラスだった覚えがあります。それがヨガとの出会いですね。
UTL ダンサーとしての身体の使い方とは違うと思うのですが、どういう影響がありましたか。
ユカリ 当時、ダンサー時代、すごく怪我を抱えていました。所属していたカンパニーの作品も結構激しいものだったりとかで、かなり怪我を抱えていて。怪我して、治りきらないうちに次のリハーサルから舞台に出て、また別の怪我をして、みたいな。怪我のループにずっと入っていたんですけど。
そこでヨガやピラティスをコンディショニング、メンテナンスとして取り入れるようになってから、怪我が減りましたね。そして、自身でリハビリのように動けるようになったので、やはりダンスだけやっていた時代とはだいぶ身体への認識も変わったし。
あと、ヨガにおいては舞台前の精神集中というか、精神統一。そういう意味で舞台袖で太陽礼拝をやっていたりとか、呼吸を深めたりとかっていうので、舞台に乗る前の気持ちが整った。そういう意味でダンサー時代にもかなり役立ちましたね。
*個人の体験であり、効果を保証するものではありません。
UTL 指導は1997年からということですが、それはダンスの指導ですね。
ユカリ それはダンスです。ヨガを教え始めたのは2006年から、ヨガを体系的に勉強してからですね。
#4 「痛くてもやる」を手放せた日
UTL ヨガを本格的に学ぼうと決めたきっかけと、ヨガのどこに魅了され、何を奥深いと感じてこられたかを教えてください。
ユカリ いまとなっては当たり前のことなんですが、身体だけじゃなくて、やはり心や精神ですよね。そういうのを含めて深く見つめることができるようになった。ボディ・マインド・スピリットという考えが、もう頭で理解するだけじゃなくて、自分が実感として体験したことで、より理解が深まったということがありますし。
もちろん身体においても、怪我のループから抜ける。怪我をしていても何かできることがある。若い時、ダンスをいっぱいやっていた時は、とにかく痛くてもやる、続ける、やればやるだけいいんだと思っていたんですよね。練習のやり方とかも。
でも、それをヨガを学ぶようになって、「あ、ちょっとそうじゃないな」と。もう一回自分の身体に、いまの自分の状態にしっかり向き合って、リハーサルもただがむしゃらに、痛いけど我慢してやるんじゃなくて、「ここはちょっとストップ」とか、そういうことができる勇気が。
UTL それまでは言えなかった。
ユカリ 言えなかったですね。痛くても我慢して自分だけで我慢してやったりとか、痛いと言いながらやったりとか。なんかそういう、すごく不安定な向き合い方になっていたんだなというのを、ヨガをやって気づきましたね。
その心のあり方とか、そんなところまでの気づきを分からせてくれたのがヨガだな、と。
#5 休むのが苦手だった私と、リストラティブ——そして東洋医学へ
UTL インド中央政府公認の養成コースから陰ヨガ、リストラティブ、経絡ヨガまで幅広く学ばれていますが、印象に残っている学びはありますか。
ユカリ インド中央政府公認のものは、ヨガ療法にちょっと興味があったので、1年だけ私は行きました。ヨガ療法よりも、もうちょっと違った身体、ボディワークの方に幅を広げたいなと思ったので、その後の3年コース、セラピーのコースには進まずに1年だけ行きました。そこで、もっと身体へのいろんなアプローチという意味で、リストラティブをまず。動いていくというところじゃなく、少し内観していく、身体を休ませる。その休むことが苦手だったから、自分が。休ませるという方向で一番究極なのは、その頃思っていたのはリストラティブだったなと思って。
それを受けて、すごく自分が変わったので。そこで瞑想状態ですよね。瞑想状態に自分を持っていくこともできたし。通常の瞑想は苦手だったんです。なんか自分、座ったままじっとしてられなくて。でもリストラティブだったら大丈夫だな、なんていうんですかね、やることがあるから。リストラティブポーズをとってそこに留まっていればいいし。身体にまず向き合う方から内側に入りたかったという意味でも、リストラティブはすごく自分に、切り替えの部分で大きな影響を与えてくれました。
UTL そこから東洋医学の方へ。
ユカリ 以前から鍼とかも怪我の治療でよく行っていたので、東洋医学にすごく興味があり、是非そこに基づいた考え方を学びたくて、次は陰ヨガを受けてみようかな、と。
陰ヨガを受けたら、また東洋医学を少し学ぶようになって、じゃあもうちょっと経絡とか、東洋医学における学びを身体を通して、ヨガを通して学びたいなと思って。それで経絡ヨガを学ぼうと思いました。それはずっと学び続けているんですけれども。
東洋医学の知識って半端なく奥深いので。ヨガもピラティスもダンスもそうですけど、もうこれで終わりというのはないから。とにかくやりながら自分もずっと学んでいるという感じです。
UTL ダンスが動くものだとしたら、陰ヨガやリストラティブは真逆にも見えます。
ユカリ そうですね。でも結局はそちらの方にもつながるんだなというふうに思っています。陰陽の考え方で東洋医学で言われる「中庸」、バランスを取るという考え方がすごく好きで。
©Shoko Kashima
#6 クラシカルからポールスターへ
UTL ピラティスは当時から体験されていたと思いますが、それを体系的に学ぼうと思われたきっかけを教えてください。
ユカリ まずは、当時私が教えていたスタジオ・ヨギーで、ニューヨークの団体のパワーピラティスの養成コースをやっていた時期があって。ヨガの仕事も忙しかったし、ダンスも忙しかったので、改めてピラティスの養成講座にというのはなかなか時間が取れなくて。そこでできるならと思って、パワーピラティスの養成を取ったんです。
パワーピラティスはクラシカルピラティスで、ピラティス先生が最初に組んだマットの順番をできるだけ継承していく団体だったんですね。(因みに分かりやすいクラシカルの団体で言えば、ピークピラティスがありますけど。)それを学んで、そのままずっとパワーピラティスで学んだ形で、クラシカルで教えていました。
*本文中の「ピラティス先生」は、ピラティスメソッドの創始者ジョセフ・ピラティスを指します。
UTL そこから変わっていったきっかけは。
ユカリ やっていくうちに、もう少し、流れ、いつも同じ順番でとかじゃなくて、もうちょっと分解して。もっとヨガとかダンスとかの中にも、このピラティスの分解した要素が確実にあるのが分かっていたので、もっとぼんやりじゃなくて、体系的に、エビデンスをもとに学びたいなと思って、他の団体を調べて。
パワーピラティスでももっと深く学べたと思うんですが、ニューヨークに団体があったので、日本に来るのはマットのコースしかないし、エクイップメント(器具)のコースも受けられなかったから。日本にホストセンターがあるところで、しかも世界で共通の認識ができるような団体を探していたところで、PMA 認定団体でもあるポールスターピラティスが一番、今の自分にとっては、学びたい部分が合致したかなというところでした。
UTL ポールスターのどのあたりが。
ユカリ ポールスターはご存知の通り、創始者がブレント・アンダーソンという医学的根拠に基づくピラティス教育の先駆者であり、理学療法士、整形外科認定専門医でもあります。コースの先生にも理学療法士さんでピラティスの先生をやっていらっしゃる方が多くいらっしゃって。スタジオコースとリハビリコースに分けられて、医療従事者はみなさんリハビリコース、私たちみたいなフィットネス系はスタジオコースで、私もスタジオコースです。
でも、やっぱりそういう理学療法士さんもいらっしゃる中で学べると、そのリハビリ要素というところも勉強できますし。特にポールスターのいいところは、解剖学ももちろんたくさん勉強しますし、エクササイズの内容だけではなくて、特にコンプリヘンシブなんかだと、その方に合わせた提供の仕方、プログラミングを、もう物凄く叩き込まれるんですね。
それを自分で見られるようになっていくために勉強していくわけなんですけれども。まだまだずっと勉強中なんですが、プライベートも何年か前からやらせてもらっていて、もっとその人に合わせたエクササイズが提供できたらいいなと思って。
もちろん、ヨガに加えてもう一回ピラティスを学ぼうと思えたのも、ダンサーたちも怪我している人がいっぱいいるし、ヨガの人たちでも結構怪我を抱えてらっしゃる方が多くいらっしゃるから。そういう方たちに、もう一度、現在の自分に合った動き方を見つけてもらう、探ってもらうという意味でも。その目的を果たす為に、ポールスターで学んでいることはすごく役立っているかなと思います。
UTL ポールスターのマットとコンプリヘンシブの違いは、コンプリヘンシブが器具まで含む全課程ということですよね。
ユカリ そうです。基本的にマットのコースはグループマットの養成なんです。グループマット指導の。コンプリヘンシブは基本的にプライベート指導で、全エクイップメント(器具)を学びます。バレル、スパインコレクター、チェア、トラピーズテーブル(キャデラック)。それにマットもプラスという感じですね。それはもうプライベートセッションに向けた学びなんですけれども、私はグループも多く指導させていただいているので。プライベートの指導がグループにも活かせると思っています。
私は、最初にマットの認定を取得してから、コンプリヘンシブの認定資格を取得しました。
UTL グループでも、ということですね。
ユカリ グループだからみんな同じエクササイズをするんですけど、でもそれぞれの痛みとか、それぞれの身体には個性がある。実はそこはヨガの、陰ヨガから学んだことなんですけどね。陰ヨガのポール・グリリー先生も、全ての人は違う骨格で、個性を持っているから同じ形にできるわけがない、と。
だから、形を真似するんじゃなくて、いまの自分と向き合って、自分はここに働きかけるためにはどのポジションが適切かというのを自身で気づいてもらう、という指導の仕方をされていて。その頃からもうずっと実践していますが、ポールスターピラティスでも同様に其々の骨格や状態を見極めてセッションを提供することが重要ということを学んでいて。
コースの時も、試験まで結構大変な過程があるんですけど、その時も、全員に同じことをやらせるんじゃなくて、「こういう場合はどうする」「こういうクライアントにはどのエクササイズを提供するか」みたいな、いろんなケーススタディを出して。この人には何を提供するか、どういうものが必要だから、このエクササイズでもここまでやるのか、どういうやり方をするのかというのを自分で考えてできるように、というのを勉強してきたんですけれども。
そういう意味でも、グループでも、受けてくださっているみなさんが同じエクササイズに向き合うんだけど、「自分にとっていまここを深める必要がある」とか、「他の人はぶれてないけど、自分はすごいぶれるのはなんでなんだろう」とか。じゃあ、ここがうまく使えてないんだったらそこを鍛える、また別のエクササイズに取り組んでもらうとか。そのエクササイズ中はまず気づくだけかもしれないけど、そこに気づいた時に、そのまま無理矢理動き続けるのではなく、ちょっと一回立ち止まっていただいて、自分にとって今どういう動きが必要かとか、ここは今やっちゃいけない動きなんだとか。自分の感覚で分かるように、気づいていただけるクラスにしたいなと思っています。
#7 ヨガとピラティスは、どこが違い、どこで交わるのか
UTL いまでこそヨガとピラティスの両方の資格を取って教える方は増えてきましたが、ユカリさんは、その両方を長く指導してこられました。ユカリさんの視点から見て、ヨガとピラティスの共通点と違うところはどういうところでしょうか。
ユカリ 基本的には全部一緒と考えたいんですけど、最終的にはつながる、同じところに入っていくんだけど、ちょっとアプローチが違うのは確かですよね。
ヨガの場合は、もう最初から身体と心を統合させるというのが大前提にあり、そこから、呼吸法や瞑想等も同時に実践していきますけれども。ピラティスの場合は、呼吸と共により身体の機能性を高める。勿論、ピラティスでも呼吸と動きの連動は大切にしてますが。あと、さっきからずっとお話ししているように、まず自身の身体を知る。自身の骨格を。そこで、いかに楽に、機能的に身体をコントロールして動かしていけるかという理解を深めるアプローチかなと思うんですね。
でも最終的に、そうやって身体が健康になれば心も自然に健康になりますよ、というところで最終的にはつながるんだけど、最初のアプローチがちょっと違うかなとは思います。
*個人の体験・見解であり、効果を保証するものではありません。
UTL よく呼吸が違うと言われますね。
ユカリ ポールスターでも学びましたけれども、呼吸は特にピラティスのエクササイズでは、動きに見合った呼吸をしなさいと教わりました。ピラティスでも呼吸と動きの連動は、重要なポイントとなります。例えば、すごくちっちゃい繊細な動きをしている時に、強く息を吐かないですよね。それをやってしまうと機能的にうまくいかない。それが余分な力、いらない力ということで。そういうところもポールスターの考えで好きなところなのですが。
あとは、パワーピラティスでもクラシカルの流れで進めますが、呼吸に関しては、あまり「絶対口から吐いてください」とは言っていなかった。自然に呼吸できるのが一番いいから。自然なのが鼻だと思えば鼻で吐けばいいし。ただ、口から吐くと吐く息に意識が向きやすくて集中しやすいから、口から吐くというのを取り入れる、というふうに教わったので。
別にそこに関して、「絶対ピラティスは口から吐かなきゃいけません」みたいなのではないというのを、いつもみなさんにそういう質問をされると言っています。鼻の方が吐きやすければどうぞ、鼻で吐いてください、と。
#8 セツバンダーサナとブリッジ——「アーサナに繋がる」ということ
UTL 水曜と金曜にやられている「アーサナに繋がるマットピラティス」。このクラス名に込めた意図を教えてください。
ユカリ 私がヨガもやっていて、ピラティスもやっていて、すごく共通点を感じることが多いんですね。これは私の考えなので、間違っていると思う方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、ヨガの動きの方がアドヴァンスのアーサナに於いてはダイナミックですよね。もちろんピラティスのアドヴァンスエクササイズとなればかなりダイナミックなんですけど。
例えば一つの例を取ると、セツバンダーサナ(橋のポーズ)においても、ピラティスってブリッジングという基本的な動きがあるんですけど。それを二つ見てみると、やっていることは最初の段階で同じなんですけど、最終的な段階でヨガの方がもう一つ可動を上げるわけですね。実は、ピラティスでもそのブリッジングの発展でアドヴァンスエクササイズに「ショルダーブリッジ」というエクササイズとなれば、ほぼほぼヨガのセツバンダーサナと同様となりますが、ピラティスに於いては、必ずブリッジングを通過してからのショルダーブリッジと発展できるのですが、ヨガのセツバンダーサナとなるとそこ(基本のブリッジング)を通さずに最初から最大可動域の後屈方向を目指してしまう方が多くいらして、そういう練習を続けてしまうと怪我に繋がってしまいますよね。
UTL 順番が違うということですね。
ユカリ なので、私の水曜・金曜のクラスでもお伝えしているのは、ヨガで言う、ブリッジ(ウルドゥバダヌラーサ)、橋のポーズ(セツバンダーサナ)を取る時にも、まずは身体をニュートラル(中立)な場所から。ニュートラルは、其々の身体構造に適した自然で無理のない一番理想的な身体が繋がるアライメント。そこから入って、身体の繋がりができた状態から、もう一つ可動を上げるというふうにすると、怪我なく、無理なく、自分の行けるところまでの最大の可動が取れるんじゃないかというふうにお伝えしたりしています。
あとは、具体的な話になりますけど、ナーヴァーサナとか、船のポーズですね。こういうのもピラティスでもありますけど。
UTL ありますよね。
ユカリ ピラティスではティーザーと言うんですが、腸腰筋を鍛えるポジションです。ヨガのナーヴァーサナと本当に使っているところは一緒なんですね。
ピラティスでは、そのポジションに留まらずコントロールしながら、床に仰向けの状態から上がったり下がったり、フルだと結構大変なことをやるんですけど、ナーヴァーサナは、あくまでもポーズを維持するという、ちょっとした違いはあるんですけど。
ピラティス先生はヨガをやってらしたので、ピラティスのエクササイズ自体はかなりヨガを意識されている部分もあるんだなというのがよく分かります。なので、必ずそこを通ってやれば、そこが十分に働いていれば。働いてなかったらそれ以上行かない方がいいし、働いていたらそこから可動をさらに上げるというやり方をしていく方が、身体にとっては順番で持ち上げていけるんじゃないかというのをお伝えしたりしています。
©UTL
#9 立って始まり、立って終わる60分
UTL 一般的なヨガクラスの流れは想像がつくのですが、このクラスはどんな感じで進んでいくのでしょうか。最初の10分は何をして、真ん中は何をして、最後はどう終わるか。
ユカリ 私は立位から入りますけど、そこからは、仰向けでサポートがある中で、背骨や骨盤やあらゆる関節を動かすというところに入って。座位でのエクササイズだったり、伸展方向の動きとして、うつ伏せのエクササイズを入れ、あとは前額面、横向きになってバランスを取ったりして、最終的に背骨の全方向の動きを入れます。
そして、一番最後も立つようにしていますね。ポールスターピラティスのプログラミングでは、必ず最後は立位で終わらせるというのが鉄則になっています。
UTL そこはヨガと違いますね。
ユカリ そこはヨガと違いますね。やっぱりヨガはシャヴァーサナで、仰向けでリラックスして終わりますでしょう。でもピラティスは立ち上がって、姿勢を整えた状態で歩いて帰りましょう、ということです。
ピラティスの団体によってはそうじゃないかもしれないんですが、私は立位から始めて、最後も立位で終わります。最終的にクラシカルのピラティスも、立位から始まり立位で終わっています。但し、最初の立位は、エクササイズに向き合う前の姿勢チェックの様なものです。
UTL 60分の中に、どんな動きが入るのでしょうか。
ユカリ 先程の回答と重複しますが、背骨の動きとしては、屈曲(丸める)、側屈、回旋(ねじり)。そして伸展(反る)動き。というのが背骨に関しては全部入るようにするし。
股関節や肩関節の動きも、曲げる、伸ばすとか。あと前額面(横向きに寝る)では足を外に広げる(外転)、内に引き寄せる(内転)というのも入れるようにしていて。
多い少ないはあると思いますけれども、基本的に身体の全方向の動きが入るようにプログラムを組んでいます。
#10 9月からのFlow Pilates——流れの中で、いまの自分を知る
UTL 9月から土曜日にFlow Pilatesを始められます。「全身のつながりを感じ、動きの質を高める」というコピーに込められた狙いと、水曜・金曜のクラスとの違いを教えてください。
ユカリ 基本的にすべては全身が繋がるように。私たちの身体は繋がっているから、ヨガもダンスもピラティスも、全部が全身で繋がるように動きたいんですけれども。
特に今回の土曜日に「フローピラティス」とタイトルをつけたのは、それは最初に私が学んだパワーピラティスでやったクラシカルの流れの様に。その時と全く同じ順番ではいかないと思うんですけれども、基本、その流れに基づいて。ヨガで言えばアシュタンガですよね、みたいに。
いつも同じエクササイズに向き合うことで、その自分のいまを知るというか。そう、クラシカルの良さがそこなんですよね。元々のピラティス先生が組んだ順番というのが、かなり理にかなっているので。
UTL 同じ順番を繰り返すからこそ分かる、ということですね。
ユカリ そうです。あと、本当はピラティスのマットって上級者向けなんですよ。最初はエクイップメント(器具)から始めて、マットはそれが全部できて自分で動ける人だから。ピラティス先生としてはダンサーとかアスリート向けに作った。なので、ちょっと日本は逆になっちゃってますけど。でも本来はそうで、マットエクササイズは、自重で全部動かなきゃいけないので。
UTL 逆のイメージがありますよね。器具の方が難しそうな。
ユカリ 器具はアシストしてくれる、助けてくれる。でも逆に言えば器具で鍛えることもできる、器具がレジストになる。ちょっと負荷をかけて、重さを使ってというのもできるんだけど、基本的にはアシスト要素が多いから、器具でやるのはどんな方でも受けられる。
マットは、どこか問題を抱えている場合はちょっと気をつけて受けないと。自重だから。でも逆に言ったら、自重だから行き過ぎることはない。腹筋とか耐えられなくなったらもうできなくなるじゃないですか。そういう意味の安全性はあるかなと思うんですが、やはり自重なので上手く使えないと代償動作にも繋がってしまうので注意が必要です。だからこそ、自身の現状にしっかり目を向けながらエクササイズに取り組むことが大切になってきますね。
UTL なるほど。土曜日のクラスは。
ユカリ 土曜日はちょっと流れを持って、エクササイズとエクササイズの間もずっとエクササイズしているみたいなイメージですね。アシュタンガでヴィンヤサを取るみたいに。それを全部経た後の、ご自身の状態を体感していただく。
まあ、私のことだから細かいことを言いたくなっちゃうので、フローと言いながら細かいこともやるんですけど。でも基本的には、その流れを大事にするというのが土曜日のクラスの特徴にしていきたいなと思っています。
UTL 水曜・金曜と土曜、どちらから受けるとよいでしょうか。
ユカリ 水曜日・金曜日を受けて一個一個丁寧にやったところから、それに土曜日という形が、理想的にはあると思います。そこで細かく学んだことを、実際につないで動かしていく。繋がるとこうなるんだよ、みたいなところも体験してもらいたいなと思って、土曜日はそのクラスにさせていただいたんですが。トランジション(動きの移り変わり)も楽しむ。いかにスムーズに繋げて動いていけるか!を楽しむクラス。もちろん、土曜日しか来られない方は、別にそこから入っていただいても全然問題ないです。それも自分のできる範囲でやればいいから。「あ、このエクササイズはちょっと完成形までいかない、手前で終わろう」というのも全然あり。そこで自分の気づきを得ていただければ。だから、土曜日でそれをやるのは、ある意味、精神的にはアドバンスですよね。自分でコントロールしなきゃいけないから。
#11 ダンス・ヨガ・ピラティス、そしてこれから受けるみなさまへ
UTL ダンス、ヨガ、ピラティスの三つが、いまご自身の中でどう結びついているか教えてください。
ユカリ 根底には、まず自分の身体を知って、そしてより自由に動くということが、すべてにおいて共通点だとは思っています。ダンスにおいては身体を使って表現をしていきますよね。でも、その使い方とか動きのコントロールとか、そういうものはピラティスの学びがすごく役立つし。そしてヨガにおいては、心との結びつきとか内観という意味でも、ダンスにおいては役立つし。
逆に言ったら、ダンスの人もヨガやピラティスをやることで、怪我を防ぎながら自分の身体をコントロールして動いていく。そこに、ヨガの内観じゃないですけれども、自分を客観的に捉える力が養われますよね。それはダンスにもすごく大きく影響すると思うんですね。
UTL ヨガやピラティスを指導されるときに、ダンサーとしての視点は入っているのでしょうか。
ユカリ やっぱり、無駄な動きをいかに省けるかというのは、ダンサーとしての視点だと思います。あとは、つながり、トランジション。「はい、これやった、はい、次これやった」というよりは、そういう過程もちょっと私は意識していますかね。それはフローピラティスにつながると思いますけど。
また、ポールスターでコンプリヘンシブを学んだ時に、器具って大変じゃないですか、セットアップとか。なんかそういうのも美しく。美しいセットアップを私は習いました。ぐちゃぐちゃっと乗っかるんじゃなくて、無駄なくきれいにセットするという。
そういう点では、もしかしたらダンスをやっていない人より、そこに関しての意識は高いのかなとは思いますね。やっぱり美しく動いてほしいなと思います。ただ、それは外見的な美しさだけじゃないんですよ。私が言っている美しさはキラキラとした外見の装った美しさではなく、内面の心の美しさです。マットや器具、そして自身の身体を丁寧に扱ったりすることが自然に出来る心の優しさというか余裕というか!そして、心から出てくる身体の躍動とか、そういうのはダンスでもヨガをやっていてもあるだろうし。
言い忘れましたが、私が一番大切にしているのは、「嘘のない動き」「嘘のない表現」です!
UTL いまも続けてらっしゃるダンスのプロジェクトはあるのですか。
ユカリ 細々とですけど。ダンスの方は、いまヨガ・ピラティスの指導が多くなっちゃったのでダンスの活動は減っています。でもダンスは自身で主催して年に一回ぐらい公演をやったりとか、昔のカンパニーに呼ばれてダンス指導に加えて、ダンサーに向けてのヨガやピラティスのワークショップをしたり、再演とかで若い子たちに自分の踊った作品を伝えたりという活動はあります。
自分でやっているのはすごい小さい企画なんですけど、それもちょっとこだわりがあって、必ず生演奏でやっているんです。生演奏でバイオリンとコンテンポラリーダンスのコラボレーション公演。などなど。
UTL 生演奏で。
ユカリ ただダンスだけを劇場で観るんじゃなくて、もっと軽やかにみなさんに観ていただきたくて。劇場ではなく小さなコンサートホールで、音楽も楽しめる、ダンスも楽しむ。なので、そのダンスと音楽のコラボレーションというのにこだわって、ずっとやってきていますね、自分では。
©大洞博靖
UTL 最後に。この記事は、ヨガを長く続けてこられた方にこそ読んでいただきたいと思っています。そういう方たちに向けて、メッセージをお願いします。
ユカリ ヨガをやってらっしゃる方は特にですけど、そんなにたくさん練習していない、ちょっと動くの苦手だなと思う方でも、自分がちょっと身体硬いなと思う方でも、受けていただくことで、自分の身体を先ず知る、いろんなことに気づける。そんな時間になるんじゃないかなとは思います。特にヨガの方においては、「このアーサナがうまくいかない」とか「ここが痛くてこれができない」とか。怪我までいかないけど、ちょっと痛みを抱えているような方においても、動かし方を、もう一回自分の中で自分の動かし方に気づける。そういう瞬間があるんじゃないかなとは思っています。
なので、諦めずに。「もう私、これできないから」とかじゃなくて、もうちょっとここをこうして使うようにすれば、できなかったと思っていたことができるようになったりとか。あとは、できない自分に落ち込まなくなるというか。他にできることはたくさんあるので。
その自分の身体の機能に向き合っていただきたいなと思います。その機能を改善するきっかけにしていただきたいと思っています。ダンスやヨガを長年やってきて、怪我を沢山経験してピラティスにより怪我を克服できた経験から、私だからお伝え出来ることが多くあると思っています。皆さんとクラスで沢山の喜びをシェアしていきたいと思います!!ご参加を心よりお待ちしております!
*個人の体験・見解であり、効果を保証するものではありません。
あとがき
怪我をして、治りきらないうちに舞台に出て、また別の怪我をする。ユカリ(太田ゆかり)がダンサー時代を語った「怪我のループ」という言葉が、このインタビューの入口でした。
そこから抜けるきっかけは、ヨガのクラスそのものではなく、ヨガを受けたことで手に入れた一言だったのだと思います。「ここはちょっとストップ」。痛くても我慢して続けることしか知らなかった人が、それを言える勇気を持てた日。
この話は、記事の後半でもう一度かたちを変えて出てきます。セツバンダーサナに入るとき、最初からフルアーチの形を目指すのではなく、まずニュートラルを通る。そこが十分に働いていなければ、それ以上行かない方がいい。働いていたら、そこから可動を上げる。指導の中身と、本人がダンサー時代に手に入れたものが、同じことを言っています。
ヨガとピラティスは最終的に同じところへ入っていくけれど、最初のアプローチが違う——という整理も印象に残りました。ヨガは最初から心と身体を統合させるところから始まり、ピラティスはまず自分の骨格を知るところから始まる。両方を長く教えてきた人だから言える順番の話でした。
ヨガのクラスはシャヴァーサナで、仰向けになって終わります。ピラティスは立ち上がって、いいポジションで歩いて帰りましょう、と終わる。同じ60分の最後の姿勢が違う。その違いを一度体験してみるところから始めても、いいのだと思います。
アンダーザライト ヨガスクールでのユカリ(太田ゆかり)のクラスは、「アーサナに繋がるマットピラティス」が水曜 14:30〜15:30・金曜 14:30〜15:30、「Flow Pilates 〜全身のつながりを感じ、動きの質を高める〜」が土曜 9:00〜10:00(2026年9月5日スタート・第4週のみ休講)です。水曜・金曜は5階のピラティススタジオで行います。
|
ユカリ |
*本記事は2026年8月17日にオンラインで行ったインタビューをもとに構成しています。