ヨガマットのアップサイクル 前編

2022年、UTLではマットの入れ替えにあたり、数十本のヨガマットを廃棄することになりました。
ただ捨ててしまうのはもったいない、どうにかならないかと思っていたさなかに、ヨガマットをアップサイクルするプロジェクト『satanama sandal』に出会いました。
UTLのシニアヨガティーチャー・HIKARU先生と工房を訪ね、彼らの想いを通じて、私たちが継続してできることを考えてみました。


デザイナーの”のんたん”こと山本倫広さん(左)
自身もヨギーでありDJ・ダンサー・BRIGHTON Studio DAIKANYAMAオーナーの宮 聡さん(右)
ヨガインストラクター・BRIGHTON Studio DAIKANYAMAディレクターのMaiko Kurataさん(中央)


使えなくなったヨガマットの行方

UTLではこれまで、どのスタイルのクラスでも使い心地がよく、なるべく丈夫で長持ちするものを選んで、レンタルマットを全てのスタジオに定員数分を常備してきました。UTLに来てくれる方々はとても大事に使ってくれますが、毎月約200クラス開催していると、丈夫なヨガマットでさえも数年(長くて5年程度)で劣化してきます。
劣化すると、ヨガの練習をする道具として安全ではなくなってくるため、そのたびに新しいヨガマットへ入れ替えていました。そして劣化した大量のヨガマットは廃棄となり、廃棄業者のトラックに積まれ運ばれていきます。その様子を見る度に、何か良い方法はないのだろうか…と毎回やりきれない気持ちになっていました。

そして2022年5月、いよいよ使用が難しくなってきた約30本のヨガマット。
また廃棄となるのかと思いきや、私たちが毎年4月に企画運営しているヨガイベント「オーガニックライフTOKYO」で出会った『satanama sandal』とのご縁で、全てのヨガマットをアップサイクルするための材料として引き取っていただけることに!
工房では、UTLで使っていたヨガマットがおしゃれで丈夫なサンダルに変身していました。

プロジェクトの始まり

このプロジェクトを始めたきっかけを、satanama sandalを代表して宮 聡さんに聞いてみました。

宮さん「僕もMaikoさんも、自分たちのスタジオから出るヨガマットの廃棄に抵抗があり、どうにか廃棄をしない方法はないか、と色々と試しつつもなかなか本格的に着手できずにいました。
2020年3月の緊急事態宣言の際に様々な経済活動が止まり、良くも悪くも着手できる時間ができました。
その時、友人であるデザイナー山本倫広さん(以下のんたん)に相談したところ『サンダルにするのはどうですか?』と、素足で踏むというヨガマットとサンダルの共通点を活かしたアイデアが飛び出し、これだ!と一気にプロダクト化が進みました。
のんたんの地道なトライアンドエラーとアイデア、専門家の方からの助言、また、Maiko先生のヨガ講師としての豊富な経験や知見から、約1年半かけて製品化となりました。」

リサイクルではなく“アップサイクル”

リサイクル・リメイクの場合、原料や材料として再利用することを指しますが、このsatanama sandalは、元の製品の素材をそのまま生かして新たな価値を生み出す“アップサイクル”。
商品の価値ともなる値段を決める際、どのような思いがあったのでしょう。

宮さん「価格設定は自然とこうなったというのが正直なところです。このサンダルは、洗浄・型どり・貼り付け・縫い付け・その他、鼻緒やストラップそれを固定する部材製作など、大小いくつもの工程を経てサンダルになります。
決して安くはない価格に関してご指摘をいただくこともありますが、大きく価格を落とすことが出来ないのが現実です。ヨガマットのように長く使い続けて行くことを前提に「厳選」「吟味」して選び抜いて購入したもの、そして、それを日々使うことで愛着がわいていくものってありますよね。
satanama sandalの履き心地やプロダクト美を気に入ってくださることは素より、プロジェクト自体に共感してくださる気持ちも大切にしていきたいですし、また、そういったところに私たちの価値があると考えています。」

HIKARU「日常的に身に付けられる物って結構限りがあるんですよね。だからこそ購入する際に気になるのは、プロダクトの裏にあるストーリー、作り手の思いに共感できるかどうか。使う度にその思いに触れて気分が上がると、さらなるインスピレーションに繋がったりします。」

HIKARU先生は、15年以上愛用しているブラックマットで日々のヨガの練習を続けているんだそう。