ヨガアライアンスの新スタンダートとは?(パート2)

[現在のカリキュラムと新カリキュラムの比較]

ここでオンライン学習について詳しくみていきましょう。
オンライン学習が認められる分野は二つ。ヨガ人文学(歴史・哲学・倫理観)と解剖生理( 解剖学・生理学・生体力学)です。それぞれ30時間必修のうち20時間分、つまり最大で40時間オンラインでの学習が認められるようになります。残りの10時間(合計20時間)は学んだことを確認するための時間として、教室で実際にアジャストをしたりディスカッションをする時間になります。

オンライン学習に関してはこれまで認めていなかったことなので導入に当たっては賛否両論あり、これまでも繰り返し議論がなされてきたテーマの一つ。先の調査で8割以上の人がこの2つの分野に関しては“オンラインでも大丈夫”と回答したことから今回導入に至ったのだそうです。そして今まさにその試験運用が行われていて、その経過を見て今後オンラインで可能な範囲を増やすことも視野に入れ、検討していく予定とのこと。これから先、今よりもっと自由な選択肢が増え、場所を問わず学べる環境が整うかもしれません。

続いて、RYS300・RYS500における変更点をみていきます。
まず大きく異なるのは、これまでRYS300・RYS500はRYS200(=ファンダメンタル)がある学校のみ行うことができましたが、これからRYS200と切り離されRYS300・RYS500のアドバンスのトレーニングだけでも行えるようになります。そして現段階で新スタンダードの詳細が発表されているのはRYS200のみですがRYS300・RYS500の詳細も近日中(2020年6月)に発表されるそうです。

RYS300・RYS500についてはすでに登録申請済みのスタジオと初めて登録申請するスタジオで新スタンダード適用開始時期が異なります。
初めて申請する場合2020年2月までは現在のまま、2021年2月以降は新スタンダードで登録することになります。すでに登録済みのスタジオの場合は2022年2月以降、順次新スタンダードで更新していくことになります。(※先のRYS200の新スタンダード適用開始時期と混同しないように注意が必要。)

 

リードトレーナーの要件の変更とは?

現在を担当するリードトレーナーは、E-RYT200・E-RYT500どちらの取得者にも認められていますが、新スタンダードではE-RYT500取得者に限定されることになります。スタジオにとってはそれが死活問題となる可能性もあり、先の調査でも最も反対する声が多く上がったテーマだそうです。

今回の東京カンファレンス全体の中でも、ここが最も参加者の不安要素や反対意見が多かったところでもあります。今からE-RYT500を受講し、修了後500時間の指導経験を積むにはあまりにも時間が足りないという意見が多数あがり、中には数年RYT200のTTを行えなくなるスタジオも出てくるのでは…?という切実な声もありました。この点においてはヨガアライアンス側でも2022年2月という新基準運用開始予定の期限を延ばすことや、キャリアの長い指導者には別の方法での対応も検討しているそうです。

例えば、E-RYT500ではなくともそれに準ずるような人(これまでリードティーチャーとして指導にあたり、すでに指導年数が20~30年のベテラン指導者など)を対象にした別の認定方法も検討しているそうです。
そしてこれまでは、RYT200のリードトレーナーがクラスに在籍している時間の規定は200時間中65時間でしたが、2022年2月以降は200時間中150時間が必須となります。つまりリードトレーナーの負担が増えることになるのではないかとの疑問も出てくると思いますのでここで二つ補足をしておきます。

一つはリードトレーナーは複数人(二人以上)登録することも可能であること。そして二つめは150時間の全ての講義を担当するということではなく、(ある分野での専門家など)他のトレーナーがトレーニングに参加することも可能です。このような変更の主な理由は、自分がトレーニングしている生徒さんが何を学んでいるのかを理解し、責任を持って保証するためだと言います。

今回の新スタンダードの目的はそれぞれの説明責任を明確にし、ヨガアライアンス側はRYT200の資格はこういうものですという説明責任、学校側はしっかりとしたカリキュラムで行なっていますという説明責任をしっかりと果たすようにすることです。これは次にお話しする倫理的コミットメントにも通じる話ですが、これからは普通の人にもRYT200(基礎レベル)RYT500(より専門的学術的なヨガを教えられるレベル)を学んだ先生は違うという認識を広めていきたいという考えからだそう。

 

[リードトレーナーの要件]

 

倫理的コミットメントとは?

ヨガアライアンスで行なった先の調査でも、約9割の人が倫理的コミットメント(実践の範囲・ヨガの平等性・行動規範)についての定義を明確にしてほしいと回答したそうです。実践の範囲とは、自分は何を教えることができるのかということを明確にすることです。

まずヨガインストラクターは医師ではありません。そのため、医学的な診断や専門的なアドバイスはできません。そして200時間を終えた人ができることは、普通のクラスでアーサナ、プラーナーヤーマを教えることであり、より専門的な知識が必要とされる産前(マタニティ)、キッズのヨガ、シニアのためのヨガクラスを担当できるレベルには200時間では到底足りないとクリスタクベリ博士は言います。もっと学術的な学び(RYT500)を深める必要があるため、ヨガアライアンスはRYT500というヨガの専門家を育成するコースを用意したそうです。
そしてヨガの平等性という点では、誰もがヨガを学べる環境を整えることが、ヨガアライアンスの目指すべきところでもあります。

言語や身体的状況に関わらず、どこにいても自分の言葉でヨガを受けられる、どんな体の人でもヨガをできる環境を作ることこそ、ヨガアライアンスの大切にしている理念の一つだそう。それには、生徒さんがやりたくないことをやらないで済むという選択をできるようにすることも含まれ、そのようなクラスを提供できる先生の育成がヨガアライアンスの果たすべき重要な役割でもあるそうです。
そのようなヨガの平等性を確保する一環として、早急にそれぞれの国の言語でのウェブサイトを作成すること、資格の申請・問い合わせに関してもそれぞれの国の言葉で対応できる体制(ヨガアライアンス側が翻訳をする)を整える努力をしていきますと、繰り返しお話しされていました。

新スタンダードによってヨガアライアンスが新体制を整えて、メンバーサポートの充実、より専門的な学びや継続的な学びを深めたい人にとってのサポートに力を入れてますますグローバルに発展していくヨガ業界の指導者のレベルアップに貢献していく団体でありたいという理念がよくわかりました。

 ≫ヨガアライアンス担当者とのQAセッションを見る