住吉美紀 × HIKARU 対談 #4

ヒカルさんと住吉美紀さんによる対談の最終回は、コロナ禍によって普及したヨガのオンライン配信がテーマ。変化の波の中で感じたことや、コロナ禍という困難が与えた気付きとは。

この先もオンラインとスタジオの両者の良さを活用

― 新型コロナウイルスによってヨガクラスの在り方も変化を余儀なくされました。現在、UTLでは月額制の「UTL YOGA ONLINE(旧:ヨガ放題)」というオンラインサービスで多彩なクラスを提供していますね。

ヒカル はい。以前から動画や録画の良さに気付いていましたが、やはりどこかでスタジオのクラスにこだわっている部分があったんですね。それがコロナの影響で開催が難しい状況になったとき、じゃあ今まで培ってきたことを新しい方法で提供しようと。普通ならちょっと躊躇することも、スタッフと先生が一丸となって「とにかくやってみよう!」となるのがUTLの良さのひとつかもしれません。UTLの底力を改めて実感しました。コロナが収束してもっと落ち着いてスタジオクラスができるようになっても、新しいツールとしてオンラインクラスは続けていきたいと思っています。

住吉  UTLの特徴のひとつであるバラエティ(多様性)が、オンラインクラスの実現にも繋がっているように思います。

ヒカル そうですね。ヨガには、数千年の歴史のなかで伝承されてきたいろいろな流派や練習法があり、それを自分なりにチョイスできる環境を先生とスタッフで作り上げてきたので。その自由な精神がコロナ禍で活きているのかも。

住吉  今も大変な状況は続いていますが、人類が得たものはちゃんとあって。さまざまな分野で、コロナが収束しても使える新しい手段が考え出されています。

ヒカル 住吉さんもご自宅からリモートでラジオをやっていますね。

住吉  はい。私たちの放送現場も、本当に苦労しながら新しいやり方を生み出してきました。まだまだ発展中ですよ。ちなみに、ヒカルさんのオンラインヨガを何度か受けさせていただいてますが、すごくいいですよね!

ヒカル オンラインにはオンラインの良さがありますよね。

住吉  オンラインとスタジオのクラスは比べるものではなく、それぞれの良さがあると思います。オンラインクラスは生活と地続きというか、お皿洗いをしてヨガをして、すぐに夕飯の準備をすることもできるし。

ヒカル スタジオに行けないと、一人での練習はモチベーションが保ちにくい時も。

住吉  家に居ながら先生のカウントでヨガができるのは画期的。スタジオだと緊張しちゃう、ヨガウエアを着るのが恥ずかしいとか、いろいろな理由で一歩を踏み出せなかった人にも届きやすくなったと思います。あと行きたいスタジオが遠くて諦めていた人にとってもオンラインは嬉しいサービスですよね。諦めていた出会いや縁を紡ぐことができるのは、本当にすごいことだと思います。

ヒカル そうですね。海外移住を機にスタジオクラスを離れた先生が、オンラインクラスに復帰して海外からクラスをお届けできることになったり。また繋がりが生まれました。

― 住吉さんがヒカルさんのオンラインクラスを受けた感想を、詳しく教えてください。

住吉  ヒカルさんは声が素敵ですね。あと、テレビの仕事を長らくしてきた私でも、編集したのかと思うくらい、ヒカルさんは見え方、見せ方を計算していて、オンラインでも何の不便さも感じない完成度。それに、一人で練習すると「よし、10呼吸頑張ろう」と思っても、しんどくなるとちょっと早くカウントしてズルしちゃったり。ポーズの間、違うこと考えちゃったり。オンラインで繋がっていると、先生のカウントと指導で動けるからズルできないし、ポーズの最中に気をつけるべきポイントも先生がリマインドしてくれる。自分では選ばない苦手なポーズにもトライできるのもいいですね。

ヒカル 先生と生徒の立ち位置が同じなのもオンラインの良さだと思います。スタジオだと前と後ろの人では声の届き方や、デモンストレーションの見え方が違ったりすることがありますが、オンラインだと全員が同じ条件だから受けやすいのでは。一方のスタジオにはスタジオの良さがあって、歩き回って生徒さんの後ろからアーサナ(ポーズ)を見られるとか。

住吉  先生側もそれぞれ異なる良さを感じているんですね。

ヒカル そうなんですよ。これからもオンラインとスタジオのクラスを両方とも上手く活用してやっていきたいです。

「ヨガは一生付き合えるツール」と実感

― お二人は、コロナ禍で改めてヨガの恩恵を感じることはありますか?

住吉  はい。私はコロナに罹患してしまいまして。とてもとてもしんどかったんですね。2週間ほど入院をして、食欲も体力もずいぶん落ちて、一時は歩くのもやっとになってしまいました。治ってから、リハビリを兼ねて運動をしたいと思ったとき、助けになってくれたのがヨガでした。身体に適度な負荷はかかるけれど、かかりすぎない、息が上がりすぎないのが良かったです。自分で負荷のコントロールもできますしね。さらに、体がヨガのアーサナで解れると、気持ちも穏やかになり、「きっと大丈夫」とポジティブにもなれた。改めて、ヨガって人生のどんなときにも対応してくれるんだなと、発見しました。

ヒカル 身体や心の調子、取り巻く環境は日々変化し、特に去年と今年はダイナミックに変わっています。その時々に合った練習法や学びのエッセンスがあり、どんなときもマッチするのがヨガなんです。

住吉  そうですね。一度付き合うと、一生付き合えるのがヨガ。私は20年くらいの付き合いになりますが、ちょっと距離ができる時期もあったり、ぐっと近づいて助けてくれる時期もあったり。哲学に寄り添う時期が続いたかと思えば、アーサナや瞑想を深めるときがあったり。いろいろな付き合い方ができる「サバイバル手段」ですね。

ヒカル ヨガは幅が広く奥深いですから。一生かけても学びきれないさまざまなテクニックや知恵があると思います。今の自分にふさわしい学びや、これから先どんな学びをしていくのかと考えるとワクワクする。「自分にはヨガがある」って思えるとちょっと心強い気もします。

「オーガニックライフTOKYO」も100%オンラインに

― 毎年、UTLは3331 Arts Chiyodaにて「オーガニックライフTOKYO」という、ヨガを中心にライフスタイル全般を発信するイベントを開催しています。住吉さんは例年、司会などで参加されていますね。

住吉  はい。レセプションの司会や講演を担当させていただいています。たくさんの方がヨガレッスンや講演に足を運び、ただのお祭りではなくて本当にヨガを好きな方たちが出会いやご縁を求めにきている場所だなと感じました。

ヒカル 本気でヨガのことを学びたい方が多く参加されます。さまざまな先生方が講座を担当しているので、多彩な角度からヨガに関われる場だと思いますよ。

― その「オーガニックライフTOKYO」はコロナ禍でどのように変化しましたか?

ヒカル 2020年からオンライン開催となり、初年度は「Zoomって何?」というところから始まり本当にバタバタで。Zoomの使い方だけじゃなく60分、90分のクラスをオンラインでどのように構成していくのかも課題でした。20日間ぐらい毎日、家でカメラの前に立って5分、10分という時間の感覚を身体で覚えながらリハーサルを重ねました。今までとは違った新しい方法で教えるために勉強するって、なんだか二度目のTTを受けている感覚でしたよ。

住吉  なるほど。オンラインヨガのTTみたいな感じですね(笑)

ヒカル 実は100%オンラインの「オーガニックライフTOKYO」をきっかけに、毎日オーガニックライフTOKYOをすればいいんだという感じになって、「UTL YOGA ONLINE」というオンラインクラスがレギュラー化しました。「UTL YOGA ONLINE」の準備もバタバタでしたが、ちょっと先駆け的だったので、どんなクラスになるのだろうと興味を持ってもらい多くの方に参加していただいています。

住吉  先ほども話しましたが、ヨガって一生寄り添ってくれて、意外なときに助けてくれるツールだと思うんです。コロナ禍で危機的な状況にいるからこそ、オンライン開催の「オーガニックライフTOKYO」でヨガと出会ってみたいという方も多かったでしょうね。

ヒカル そうだと嬉しいです。



住吉 美紀
フリーアナウンサー/文筆家
小学時代はアメリカ・シアトル、高校時代はカナダ・バンクーバーで暮らす。国際基督教大学(ICU)卒業後、15年間、NHKアナウンサーとして「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスター、「第58回NHK紅白歌合戦」総合司会のほか、海外取材や音楽番組、インタビューや中継番組など多分野にわたって担当。2012年からはTokyo FM朝の情報ワイド番組「Blue Ocean」(月~金、9:00~11:00)のパーソナリティーを務め、気づけばラジオはライフワークに。2020年より夫とオープンしたカフェ「ミアヴァート珈琲」では店のプロデュースや焼菓子製作などを担当している。シヴァナンダヨガ正式指導者資格、NARD JAPAN認定アロマアドバイザー資格保有。著書に「自分へのごほうび」(幻冬舎)。茶道、着物、音楽、ネコを愛する。

HIKARU
ヨガ講師、アーユルヴェーダ・カウンセラー
アンダーザライト ヨガスクールで指導者養成コースのリードトレーナーを担当。シヴァナンダヨガ正式指導者。
AyuSyaでは、ヨガとアーユルヴェーダの叡智を統合させたセルフケアの方法を提供する。 著書に「やさしいヨガ」「はじめてのヨガ 」「はじめてのアーユルヴェーダ」「体が硬い人のヨガ入門」(以上、主婦の友社)等。


ヨガクラスで出会い、互いの「存在」に惹かれて
#2 受講動機を問わず、必ず身になる「学び」がある
#3 疑問と共に踏み出した、TT指導者への一歩

#4 この先もオンラインとスタジオの両者の良さを活用